下痢とは
形のない軟便や液状の水様便が出る状態で、3週間以上続く場合は慢性下痢とされます。腸には1日9リットルの水分が送り込まれていますが、便として排出される水分は1%程度であり、残りの99%は吸収されています。便の水分量は、正常な場合が60~70%、軟便が80~90%、水様便が90%以上とされています。
下痢の原因
暴飲暴食、刺激が強い香辛料の過剰摂取など、日常的な原因によって起こることも多いのですが、感染やストレス、様々な大腸疾患でも症状として下痢を起こすことがあります。
下痢を起こす主な疾患
過敏性腸症候群
腸の機能不全や知覚過敏などによって慢性の腹痛や便通異常を起こす疾患で、緊張や不安などのストレスをきっかけに強い腹痛と激しい下痢を生じるタイプや、便秘と下痢を繰り返すタイプなどがあります。炎症などの病変がないので気持ちの問題や体質の問題と誤解されることがありますが、適切な治療で症状を改善に導くことが可能です。
感染性腸炎
ウイルスや細菌に感染して下痢を起こしている状態です。細菌ではサルモネラ菌やO-157、ウイルスではノロウイルスなど、激しい下痢を起こす感染性腸炎は多く、発熱や嘔吐などを伴うこともあります。水分を十分にとれないと脱水を起こすことがありますので、しっかり水分補給してください。なお、下痢止めの市販薬を服用すると、病原体がつくり出す毒素が排出されずに症状が重篤化してしまい、危険です。感染性腸炎が疑われる場合は適切な治療を受けるようにしてください。
潰瘍性大腸炎・クローン病
慢性的な炎症性の疾患で、腸の粘膜にびらんや潰瘍を生じさせ、下痢や血便などの症状を起こします。症状のある活動期(再燃期)と症状のない寛解期を繰り返すため、断続的な治療が必要です。若い世代の発症が多く、近年患者数が増加しています。難病指定されており、早めに専門的な治療を受ける必要があります。
薬剤性腸炎
抗生物質、胃酸抑制分泌薬、下剤、抗炎症薬、抗がん剤、免疫抑制剤などが原因で下痢の症状を起こすことがあります。抗生物質による下痢は、腸粘膜に偽膜という膜ができる偽膜性腸炎が起こる場合もあります。胃酸抑制分泌薬による下痢は、膠原繊維性大腸炎を介して起こる可能性があります。服薬を中止すれば症状が改善する可能性がありますが、診断を受ける必要があります。
大腸ポリープ・大腸がん
大腸がんや大腸ポリープでもかなり大きくなると便の通過を妨げて、下痢や便秘の症状を起こすことがあります。大腸ポリープのほとんどは良性腫瘍である腺腫ですが、放置していると時間をかけてがん化する可能性があることから、大腸ポリープは前がん病変と考えられています。大腸カメラ検査で発見した大腸ポリープはその場で切除することが可能であり、将来の大腸がん予防につながります。
下痢の時ヨーグルトはダメ?
下痢の治療
脱水を起こさないよう水分摂取量などを確認し、必要があれば点滴を行います。疾患によって生じている下痢の場合は、疾患の治療を行います。暴飲暴食などによる一過性の下痢では、水分をしっかり補給する、消化しやすく腸に負担が少ないものを控えめに食べる、足腰を冷やさないことが重要です。
急性下痢
こまめに水分を補給して脱水を防ぎます、冷たいものは刺激が強いので避け、常温か温かいものをとってください。カフェインなど刺激になるものが含まれていない白湯、麦茶、湯冷まし、経口補水液などが適しています。嘔吐を伴う場合、水分をうまく補給できず脱水が進んでしまうため、点滴が必要です。
食事は、白粥、やわらかく煮込んだうどん、食パン、すりおろしたリンゴ、コンソメスープ、出汁や薄めの味噌汁、豆腐などを少しずつとってください。ヨーグルトはあまり適していないとされています。
感染性腸炎が疑われる場合、家族にうつしてしまう可能性が高いため、患者様とご家族はしっかり手洗いをしてください。また、調理など食材を扱う仕事、医療・介護・保育などの関係者は症状が完全に消失して48時間経過するまで仕事を休まれるようお勧めしています。
慢性下痢
冷たいもの、刺激の強いものの摂取を控えます。食事は消化しやすく栄養価の高いものを控えめにとります。ごはんやうどんもやわらかく仕上げると腸への負担が減ります。牛乳など特定の食品をとると下痢しやすい場合には、そうした食品を食べないよう注意してください。
香辛料やカフェイン、アルコールを控え、消化しにくい油脂分も減らしてください。また、たんぱく質は脂肪が少なく消化しやすい鶏のささみ、白身魚、卵、豆腐や納豆などでとるようにします。