当院の肛門内科
肛門疾患は恥ずかしいと思われがちで受診をためらって悪化させてしまうケースが多いのですが、早期に適切な治療を受けることが心身ともに負担を軽減させることにつながります。特に、痔は早期であれば薬物療法で比較的短期間に治せるケースが多くなっており、注射など心身への負担が少ない治療が可能になってきています。また、痔は再発しやすいため、予防を視野に入れた治療を受けることも重要になります。
当院では、はじめての方でも気兼ねなく受診いただけるよう、プライバシーにきめ細かく配慮した診療を行っております。特に、当院では、内科・消化器内科といった複数の診療科がありますので、肛門内科にかかることを知られることなく、診察や検査を受けていただけます。
なお、肛門疾患の症状は、大腸がんなどとも共通しています。当院では消化器内科の専門的な診療も行っていますので、微小な早期大腸がんや前がん病変の大腸ポリープがあった場合にも適切な対応が可能です。
肛門に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
肛門診療の流れ
1問診
プライバシーの確保に努めながら、問診を行っていきます。症状、既往歴、服用している薬、生活習慣やライフスタイル、排便状況などについて、ご回答いただきます。気になることがありましたら、お気軽にご質問ください。
2検査準備
必要に応じて視診や指診を行います。検査を行う場合、検査前に検査ができる状態に整えておきます。診察の際に医師が視診や指診を行いやすいように、診察台で横向きになり、膝を軽く曲げて下着を太ももの半ばくらいまで下ろしてください。看護師が大判のタオルを腰にかけますので、検査までお待ちください。
3検査
医療用の麻酔ゼリーを肛門に塗って、ゴム手袋をした指を肛門に入れ、しこり・ポリープ・狭窄などの有無を確かめます。その後、肛門鏡に麻酔ゼリーを塗って肛門の中を確認します。麻酔ゼリーをたっぷり使うことで痛みや不快感は軽減されます。
大腸疾患が疑われる場合は、大腸カメラ検査を行うこともありますが、その際には事前にしっかりご説明し、納得いただいた上でご予約いただいています。
4診断とご説明
診断結果や必要な治療についてご説明します。治療方針に関しては、医師から一方的に伝えるのではなく、患者様と相談しながら決めていきます。肛門疾患は食生活や排便習慣などの生活習慣が悪化や再発と大きく関わっていますので、当院では生活習慣改善に関するアドバイスもしっかり行っています。お悩みやご希望がありましたら、お気軽にご相談ください。
肛門に生じる主な症状と疑われる疾患
肛門からの出血
肛門科の受診で最も多い症状であり、疑われる疾患には、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)があります。ただし、肛門からの出血は血便や下血として生じている可能性があり、その場合には大腸疾患が疑われます。肛門から出血が見られる大腸疾患としては、大腸がん、前がん病変の大腸ポリープ、炎症性疾患などがあります。大腸がんや大腸ポリープは早期発見によって寛解が期待できます。また、炎症性疾患で難病指定されている潰瘍性大腸炎やクローン病においても、専門性の高い治療でコントロールすることによって発症前とあまり変わらない生活を送ることも期待できます。当院ではこうした大腸疾患の早期発見や正確な診断、適切な治療につながる精度の高い大腸カメラ検査を行っております。お気軽にご相談ください。
症状
- 排便前後に、血がポタポタと垂れる
- 大量に出血する
疑われる疾患
内痔核(いぼ痔)が疑われます。特に痛みがなく出血だけが生じる場合は内痔核(いぼ痔)の可能性が高くなります。便器が真っ赤になって驚かれることや繰り返し大量に出血することで貧血を起こすこともあります。
症状
- 下着に血液が付着する
- 膿が付着する
疑われる疾患
脱出を伴う内痔核(いぼ痔)、直腸脱、血栓性外痔核、痔ろうなどが疑われます。内痔核(いぼ痔)、直腸脱、血栓性外痔核の場合は肛門から脱出したものが下着に擦られて出血を起こします。痔ろうは膿が付着する場合が多く、血液が付着することはほとんどありません。
症状
- 便に血液が付着する
- 便に血が混じっている
疑われる疾患
内痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)といった肛門疾患に加え、大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病、虚血性大腸炎なども疑われます。できるだけ早く大腸カメラを受ける必要があります。
症状
- 便意があっても便が出ず、血液だけが出る
- 血の塊が出る
疑われる疾患
内痔核(いぼ痔)でこうした症状を起こすこともありますが、虚血性大腸炎、大腸憩室出血、大腸がん、前がん病変の大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病などの大腸疾患の可能性が高い状態です。できるだけ早く大腸カメラを受ける必要があります。
腫れやふくらみ
いぼ状のふくらみ、粘膜などのでっぱり、肛門からの脱出は、内痔核(いぼ痔)、肛門ポリープ、直腸脱、肛門皮垂などが疑われます。また、直腸に大腸ポリープができて、それが脱出しているケースもあります。早めに大腸カメラを受けることが推奨されます。
症状
- 排便時に肛門からでっぱり(腫れ・ふくらみ)が出てくる
- 排便時に肛門からでっぱり(腫れ・ふくらみ)が脱出する
- 排便後に肛門からでっぱり(腫れ・ふくらみ)が自然に戻る
- 排便後に肛門からのでっぱり(腫れ・ふくらみ)が押し込まないと戻らない
- 排便後に肛門のでっぱり(腫れ・ふくらみ)を押しても戻せない
- 排便時以外に肛門にでっぱり(腫れ・ふくらみ)がある
疑われる疾患
内痔核(いぼ痔)の脱肛、肛門ポリープ、直腸脱、前がん病変の大腸ポリープなどが考えられますが、出血や腫れ、ふくらみだけでは正確に診断できません。大腸ポリープの脱出はまれですが、進行してがん化させる前に切除することで将来の大腸がん予防につながります。
症状
- 力を入れた際に違和感があり、肛門に腫れやしこりが生じる
- 肛門付近に軽い痛み、強い痛みがある
疑われる疾患
血栓性外痔核が疑われますが、初期の肛門周囲膿瘍の可能性もあります。肛門周囲膿瘍を放置してしまうと痔ろうになり、手術でしか治せなくなってしまうので、早期の受診と治療が重要です。
症状
- 肛門に軽い違和感があり、次第に痛みや腫れが強くなる
疑われる疾患
肛門周囲膿瘍が疑われます。化膿が悪化すると、痛み、発熱などを生じることもあります。進行させてしまうと痔ろうになり、手術でしか治せなくなってしまいます。
症状
- 肛門にブヨブヨ・ビラビラしたできものがある
疑われる疾患
肛門部の皮膚がたるんでしまっているスキンタグの状態です。痔や強くいきむ習慣によってできることがあり、女性の場合は出産時のうっ血などによってスキンタグを生じることがあります。
症状
- 肛門周辺に小さないぼやざらつきが生じる
- 細かいいぼが集まって鶏のトサカやカリフラワーのようなものが生じた
疑われる疾患
感染症の尖圭コンジローマが疑われます。性感染症ですので、パートナーの治療も必要です。
症状
- 排便時に痛みがある
- 常に肛門痛がある
- 肛門部の皮膚がヒリヒリする
疑われる疾患
裂肛(切れ痔)の場合、排便時から排便直後は強い痛みがあり、初めのうちは痛みがすぐに解消します。しかし、悪化すると数時間痛みが続くようになります。痛みが長く続く場合、何度も切れた肛門の傷が深くなり、括約筋までダメージが及んでいることも考えられます。早めに受診して適切な治療を受けないと、肛門機能に障害を残す可能性もあります。
症状
- 常に肛門痛がある
- 排便に関係なく痛みがある
- 肛門周辺が痛くて眠れない
- 肛門周辺が座れないほど激しく痛む
疑われる疾患
血栓性外痔核、肛門周囲膿瘍、膿皮症、肛門部アテローム(粉瘤)の可能性があります。悪化を防ぐためにも早めに受診してください。
症状
- 肛門周辺の皮膚がヒリヒリと痛い
- 肛門周辺にジクジクと湿った痛みがある
疑われる疾患
肛門周囲皮膚炎、単純ヘルペス、帯状疱疹(水疱瘡のウイルス感染症)など、肛門周辺の皮膚疾患が疑われます。視診で診断できる場合がほとんどですが、適切な治療のために血液検査や組織を採取して検査する必要が生じる場合もあります。単純ヘルペスの場合、女性が初感染すると激しい痛みを生じることがあります。また帯状疱疹の場合、強い痛みを長く残す帯状疱疹後神経痛を起こさないためにもできるだけ早い時期の受診が重要になります。
便が出にくい
内痔核(いぼ痔)の脱肛などによって便が通過障害を起こし、便を出しにくい・ほとんど出ない状態になることがあります。また、女性の場合、膣の方に直腸がふくらんでしまって便が出しにくくなることもあります。
症状
- 排便時、膣にふくらみが生じてうまく排便できない
疑われる疾患
直腸瘤という、女性特有の病気です。直腸が膣の方向にふくらんでしまい、いきんでもうまく排便できなくなります。膣のふくらみを押さえると排便できます。
症状
- いきんでも全く排便できない。ごく少量しか出ない
疑われる疾患
内痔核(いぼ痔)、直腸脱、大腸がん、直腸瘤、肛門狭窄、過度の便秘などによって通過障害が起こり、便が出せない状態です。まれですが、括約筋をうまくゆるめることができずに便を出せなくなるアニスムス(排便協調障害)によって生じることもあります。
かゆみ
かぶれや湿疹、カンジダ菌をはじめとする真菌(カビ)感染、寄生虫など、様々な原因で生じます。また、痔ろうやその原因となる肛門周囲膿瘍でもかゆみを起こすことがあります。真菌感染の場合、抗真菌薬を使った治療をしないと悪化してしまうことがあります。かゆみを軽い症状と考えず、早めにご相談ください。
症状
- 常に肛門周辺がかゆい
- 就寝時や身体が温まると肛門周辺のかゆみが増す
疑われる疾患
かぶれや湿疹など肛門周囲皮膚炎、肛門部白癬や肛門部カンジダ症など真菌感染が疑われます。肛門はアルカリ性の便にさらされるため皮膚の炎症を起こしやすく、湿疹やただれを起こすこともあります。また、足の水虫と同じ白癬菌による肛門部白癬、肛門部カンジダ症は真菌感染によって生じ、一般的な皮膚病の治療では治せず、抗真菌薬による治療が必要です。激しいかゆみで眠れなくなることもありますので、早めに受診してしっかり治しましょう。
症状
- 肛門周辺に軽いかゆみや違和感がある
- 肛門周辺に熱感がある
- 肛門周辺が痛む
- 発熱する
疑われる疾患
肛門周囲膿瘍が疑われます。進行すると痔ろうになって手術しなければ治せなくなりますので、他の症状が出る前に受診してください。
症状
- 肛門周囲がかゆい
- 明け方に肛門周辺のかゆみが生じやすい
疑われる疾患
蟯虫(ぎょうちゅう)の感染が疑われます。海外渡航や無農薬野菜によって感染する例があります。特に夜明け前に肛門のかゆみが起こりやすいため、こうした症状がある場合は検査を受ける必要があります。駆虫薬による駆除が可能です。